#6−3 柊-side

 静まり返った部屋の中。

 柊とその他大勢が無言でその場に座っていた。

「で? 結局どうするんだよ?」

 昨日の話し合いで何も決まらなかった為、今日もう一度話し合うことになったのだ。

 しばらく続いた沈黙を破ったのは、有蓋だった。

 しかし柊は無言のままだ。

「移るか? それとも・・・」

「元を断つ・・・か?」

 元々荒くれものだ。

 こんな沈黙には耐え切れないとばかりに、皆が口々に言いあいだした。

「ただの貴族じゃないぞ」

「東の統領か・・・」

「前に使ったルートはもう使えないんじゃないか?」

「いっそのこともっと便のいい所に移るって手も・・・」

 口々に言い合うゴロツキ共に、今まで沈黙を保っていた柊が口を開けた。

「・・・せっかく浸かり湯も作ったしなぁ」

 あれは結構苦労したのだ。

 部屋を増やそうとした際一度は泥まみれになったものの、その後またピカピカにしたのだ。

 あれをまた一から作るかと思うとドッと疲れが溜まる気がした。

 その声に、皆もザワザワとした。

「・・・やるか?」

「・・・やっちまうか?」

 結局、皆暴れたいのだ。

 そこへ継嗣が広間へ入ってきた。

 いつもなら聡里も一緒のはずが、この時は継嗣一人だった。

 柊はアレ?と思うものの、しかしその事を何となく口に出せずにいた。

「あれ? 姫さんは?」

 不意に聞こえた仲間の声に、柊も丁度いいとばかりに耳を傾ける。

「ん。部屋」

「ははぁ。昨日の夜は相当激しかったと見える」

「阿呆か」

 囃した仲間の頭を軽く小突いた継嗣は、いつもの定位置へと腰を降ろした。

 それを視界の端で眺めながら、立て肘ついた指を苛立ち気味に揺らす。

「んで、どうするか・・・だなぁ」

 いつまでたっても決まらない答えに、柊は頭を掻いた。

「いっそ乗り込んじまった方がいいんじゃねぇか?」

 気だるそうに言った継嗣に視線をやりつつ、ガクリと頭を落とす。

「・・・お前もか」

「だってよぉ、じゃねぇといつまで経っても終わんねぇぞ」

 継嗣が軽く睨むようにして言った。

 継嗣が強く言うのも解かるのだ。

 耶西をどうにかしなくては、場所を移動させたとしても再び同じことが起きる。

 聡里が一緒にいる限り・・・。

 広間はシンと静まった。

 そこへ慌しい足音が聞こえてきた。

「頭!!」

 大きな音を立てて扉を開けたのは、今日の掃除当番らしい下っ端だった。

 わずかに青ざめている下っ端の顔色に、柊は知らず眉間に皺を寄せていた。

「ひ、姫さんが・・・ッ」

 とたん、継嗣と柊がガタッと同時に立ち上がり、それに柊がハッとし気まずそうに腰を下ろす。

「・・・姫さんがどうしたって?」

 目をそらしながら、しかし机を指で繰り返し叩く様子に苛付く様が表れていた。

「姫さんが変なヤツラに連れてかれやした・・・ッ」

 ダンッという音が耳に入り目をやると、どうやら継嗣が机を殴ったらしい。

 柊は苦虫を噛み潰した様な顔で頭を数回掻いた。

「・・・部屋にいるんじゃなかったのかよ」

「・・・俺が出る時はちゃんと部屋にいた」

 もはや広間は静まり返っていた。

 最初のような静けさじゃない。あちこちに緊張・・・不安・・・よくない空気が漂っている。

「オイラ、外に出て行く姫さんを見かけたんで、何処に行くのか追いかけたんスよ。・・・一人じゃ外は危ないしよ・・。そしたら、姫さんを待ち伏せしてたみたいな男が・・・」

 下っ端は項垂れるようにして言葉を口にした。

 何も出来なかったことを悔やんでいるようだ。

「・・・決定だな」

 不意に言った有蓋の一言に、継嗣も柊も視線をあげた。

「乗り込んで、聡里を連れ出しつつ・・・潰すか」

 継嗣は柊に視線を遣りながら言った。

 その顔は心なしか笑っているような気がした。

 何せ耶西を潰すにしても、決定的な切っ掛けが無かったのだ。

 しかしこれで理由付けにもなるし、遣りやすくもあった。

 継嗣と顔を見合わせ、柊はニヤッと口許を吊り上げた。

「・・・よし。準備が出来次第すぐ行くぞ!」

To be continued・・・

back top next

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送