#1−1 聡里-side

 馬の蹄の音が永遠と聞こえてくる。どのくらいの時間がたっただろう。

「聡里(聡里)様、もうじき我等が華国から凛国へ入ります」

「長旅お疲れでしょうが、今しばらくのご辛抱を・・・」

 御輿の外から聞こえた声。御輿を守るようにして歩く護衛の声だった。

 しばらくの辛抱・・・本当にそうなのだろうか。苦渋はこれからなのではないだろうか。

 聡里はただただ御輿の中で静かに目を閉じた。

 ゆらゆらと揺れる中、思うことはひとつ。

「・・・兄様はお元気だろうか」

 昨晩のこと、『すまない聡里。私が不甲斐ないばかりに・・・。必ず・・・必ず華に呼び戻してみせる』

 戦に破れ、怪我をした兄のことが心配だった。お心を痛めていないだろうか。

「聡里は・・・大丈夫です・・・」

 遠くにいる兄を偲んだその時だった。御輿の周りがざわざわとざわめいている。

 護衛兵たちの悲鳴、雄たけび。あまりに突然のことで、何が何だか解らなかった。

 何事かと思う間もなく、御輿の簾が勢いよく引き上げられた。

 思わず声にならない悲鳴を漏らす。目を見開き、そこに現れた男を凝視した。

「へぇ・・・こいつがお姫様か。何でも凛の王様が目をつけた・・・っつー美姫・・・ねぇ・・・?」

 太い無骨な指が聡里の顎を強く掴んだ。

 痛みを感じつつも、恐怖で声が出ない。

「こりゃあ確かに美人だぁ。凛の王様なんぞにゃあ・・・もったいねぇ」

 口許を厭らしく吊り上げ笑った男は、躯を乗り出し御輿の中へと入り込む。

 そして、聡里の衣服を引き裂いた。

「ひ・・・っ」

 素肌を庇い距離を取ろうとするが、狭い御輿の中、逃げられるはずがなかった。

「いいねぇ、その怯えた瞳。もっと逃げて見せろよや」

 男は笑いながら、ゆっくりと腕を伸ばしてくる。

 それを必死になって逃げようとするが、ついには腕を掴まってしまった。

 いや、男はまるで遊ぶように、捕まえられる距離をわざとすれすれで逃していたのだ。

「なんだぁ?もう終わりかぁ?んじゃあ・・・頂くとするかぁ」

 聡里の躯の下に組み敷き、男は舌なめずりをして聡里を見下ろす。

 その舐める様な視線に、聡里は恐怖で歯をガチガチと鳴らした。

 男の指が滑るように下肢へと伸びていく。

 ふと太腿をなぞる指が止まった。

「・・・お前・・・男か・・・」

 聡里に返事は到底できなかった。

「情報じゃ、この国に男御子は二人しかいないはずだが・・・。一人目は前王の意思を継いだ斎王、二人は斎王の右腕・白藍・・・。あとは姫が3人・・・と。姫は滅多に顔ださねぇから名前すらあんまり覚えちゃいねぇや」

 しばらく何事か考えていた男であったが。

「まぁ・・・そんなこたぁどうでもいいことか。」

 聡里の脚をグイッと持ち上げ、吊り上げた口唇をひと舐めする。

「ようは・・・ヤれるかヤれないか。そんだけだ」

 後はもう男の成すがままだった。

 狭い御輿の中、荒々しい呼吸が響き渡り、聡里は息も絶え絶えに男の与える律動に躯を開く・・・ただそれだけ。

 持ち上げられた脚を顔の横まで折り曲げられ、苦しい体勢を強いられながらも、体内を抉られる動きに嬌声が漏れる。

「あぁ・・・っはぅ・・ん・・・っ」

 濡れた音を響かせながら、なおも男の執拗な責めは続く。

「お頭〜あとで俺たちにもまわして下さいねー?」

 御輿の外から声がする。御輿の周りで荷物を物色している男の手下たちであろう。

 御輿の薄い簾ごしに聞こえてくる艶やかな声が耳に毒である。

「うるせぇ!!さっさと荷をまとめちまいな!!日が暮れちまうだろうがっ」

 男が荒々しく腰を打ちつけながら怒鳴る。

 もはや、聡里の纏っていた衣服の原型はない。

 ただの千切れた布を引っ掛けているだけだった。

「あぁ・・・っやめ・・・っもうやめて・・・っ」

 頭を左右に激しく振り、痛みなのか性感なのか・・・。悶え耐える姿がいっそう男を煽る。

 その時、御輿の外で異変が起きた。

「ぐぁ!」

 何人もの潰れたような声がすると同時に、誰かが倒れる音。

 そして・・・。

「敵襲ーーーーーっ!!」

 御輿の外で響いた声に、男はいきり立ったように怒鳴った。

「んだと・・・?くそ・・・っ!こんないい時に・・・っ」

 男は舌打ちをすると、聡里の尻をさらに高く持ち上げ、下へと叩きつけるように腰を打ちつけた。

 御輿の中で、聡里の絶呼が響いた。


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