昨日の敵は今日の友。






松野はうんざりとした顔で目の前にいる人物を眺めた。
そして今日何度目かの溜息を吐く。

「おい、聞いてるのかよ。」
「・・・・・・・・」

椅子の背に顎を乗せこちらをじっと見つめる男。

なんで俺がお前の相談を受けないといけねーんだよ・・・・。

「お前は心配じゃねーのかよ。」
智早はいつまでたっても言葉を返そうとしない松野に苛立ったようにそう言った。

「・・・・知らねーよ。そんなに気になるんだったら実際に保健室に行って見ればいいだろ。」

いかにも面倒くさいといった素振りの松野に智早は眉を顰める。

「お前、透司のこと好きなんだろ?だったらお前だって気になるだろ。いまごろ二人で
何かしてるかもしれないんだぞ。」
「・・・・・・・」
「だいたいハジメちゃんはいつも俺より透司のこと優先するし、俺に言う”先輩”って
響きと透司に言う”先輩”っていう響きもなんか違う気がするし。」

(・・・・お前の思い違いだろ。)

「透司だって、可愛いハジメちゃんと二人っきりだったらムラムラきて
押し倒したっておかしくないし。だいたいあいつ本当に体調悪いのかよ。朝会ったときは
ぴんぴんしてたんだぜ。ハジメちゃんを陥れる作戦なんじゃねーのか?」

(・・・・・・・・・・)

「おい、さっきから黙り込みやがって。何か言えよ。」

「知らねーよ、そんなこと。さっきからウルセーな。気になるならさっさと一人で
行ってこいよ。」


智早の話を要約すると、放課後の生徒会室にいつもどおり遊びに行けば具合悪そうな
透司と心配そうに支える坂遠。保健室に連れて行くというので俺も行くと言えば、帰ってきたのは
ついて来るなのその一言。


要するに、二人が放課後の保健室でコトに及んでいないかと心配しているわけだ。
その心配にいつも溜めてきた嫉妬も少しプラスされているといったところであろう。


「透司、最近イロイロと溜まってそうだったしな・・・・」

(・・・・・・・・・)

「まえにハジメちゃんのこと可愛いって言ってたし・・・・。」

(・・・・・・・・・・・・・・・)

「案外二人とも合意して付き合いましょうなんてことにもなってるかもなぁ。」

(・・・・・・・・・・・)

智早の言葉に松野の表情が少しずつ変わってくる。

松野は透司に対して何度も好きだと言った事はあるが、透司から松野に対しては
一度だって言われたことはないのだ。
体の関係は結んだものの付き合っているとは言えはしない。

思えば坂遠は確かに可愛い。
透司も抱くとしたら自分より坂遠を選ぶだろう。

智早は俯く松野の横に移動すると松野の髪に指を絡める。
そして耳元に唇を寄せるとそっと耳たぶを甘噛みした。

「なぁ、お前も行くだろ?」



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「先輩大丈夫ですか?」
ハジメはベットに寝ている生田を心配そうに見つめた。

「・・・ああ・・。少し熱があるだけだ。お前はもういいから生徒会室に
戻れ。会長一人じゃ仕事が大変だろう。」
「わかりました。それじゃ・・・・・」
ハジメは生田を気にしながらも座っていた椅子から立ち上がりカーテンを開けて
出て行こうとした。
だがそのときちょうどよく保健室のドアが開く音がしてぴたりと立ち止まる。

「誰か来たみたいですね。先生かな。」

そう言って白いカーテンから顔を出せば入ってきたのは、恋人である智早と
知り合いである松野の姿があった。

「先輩、麻生先輩と松野さんですよ。心配して来たんですねきっと。」
ハジメは笑顔でそう言ってベットで寝込む透司の方を振り向いた。

「・・・智早と孝治が?」


だがハジメの予想と反して二人は隣のベットへと入っていくとカーテンを閉めてしまった。
白いカーテンで囲まれた中の様子はもはやハジメからは見ることが出来なかった。

「あれ・・・どうして?」
ハジメはわけがわからなくて首を傾げる。

「どうした?」
そんなハジメを見て熱のせいか掠れるような声で生田が尋ねる。

「いや・・・なんか二人とも隣のベットに入って行って・・・」
「・・・・・・・」


「やああっ・・あっ・・あ、ああ・・」


突然隣から聞こえてきた声に二人の肩がびくっと揺れる。

「え・・・・今の声って・・・」


「あっ・・・やめろって・・・んあっ・・」

「この声って・・・え・・だって・・・」
ハジメは信じたくないと言う気持ちでいっぱいだった。
それでも聞こえてくる艶っぽい声は確かに松野のものである。

先輩・・・どうして・・・・。
ハジメの瞳にうっすらと涙が滲む。

生田の様子はというと無言のままに天井を見つめているだけだが
あきらかにただならぬオーラを発している。

その間も隣のベットからはとどまることなく松野の嬌声が聞こえていた。





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時は遡り、智早と松野が隣のベットに入る。



「・・・・で、どうなんだよ。」
松野はこっそりと隣のベットの様子を盗み見る智早に声をかける。

「・・・・何もしてないみたい。」

「そうか。」
その答えに松野はほっと表情を緩め、もうここに用はないとばかりに
座っていたベットから降りて保健室を出ようとした。

そう。したのだが・・・・・・
それは智早の腕により遮られてしまった。

「なんだよ麻生。」
腕を離せとばかりに松野は智早に向かってそう言った。
だが智早は松野の瞳を見ると二ヤリと笑って、離すどころか逆に腕を引いてきた。

「っ、おい。」
「たまには俺らも嫉妬されたくない?」
「・・・・は?」
何を言ってるんだ、と言わんばかりの松野に智早はだから、と言葉を付け加える。

「だからさ、いつも俺らばっかり嫉妬してるだろ?たまには向こうから嫉妬されてみたくないか?
嫉妬するってことは好きだってことだろ?お前も透司がお前のことどう思っているのか
気になるだろ?」

確かに・・・・。

智早の提案は松野からみても魅力的だ。
ここで何をするのかは知らないが、もし本当に透司が嫉妬してくれるのならばどんなに嬉しいことだろうか。

「・・・・・なにするんだ?」
松野は智早にそう尋ねた。




「ちょ、ちょっと待てよ。」
「いいからいいから、お前もさっきやるっていったじゃねーか。」
「やるって、なにをやるんだよ!」
「だから、お前があんあん喘いでくれればそれでオッケーなんだよ。」
「だったらこの手は何だよ!」
松野は自分の胸元と下腹部を撫で回すと智早の手を抓りあげた。

「いてっ!なんだよ、じゃあお前一人で演技するか自慰するかして喘いでくれるのかよ。」
あまりの言葉に松野の顔が赤くなる。

「うっ・・・それは・・・・」
無理に決まっている。
演技で声を出して喘ぐなんてできないし、智早のいる前で自慰するなんてもってのほかだ。

「なんだよ、やっぱりできないんだろ?だから俺が協力してやるって言ってるんだろ。」
そう言って智早は再び松野の体に掌を這わせ唇を落とす。
「あ、ああっ・・・・やめろ麻生・・・んあっ・・」
「そうそう、そんな感じ。もう少し大きい声でもいいかも。」
智早は無邪気な顔でそう言って胸の尖りをきゅっと抓った。
「あああ!」
「おお、いいねー。色っぽい。松野って透司とヤルときもこんな声出すの?」
智早の質問に松野は智早の頭を叩いた。

「なにを聞いてんだ馬鹿!」
「いってーー!すぐ叩くなよ!」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人だが、その声は隣から聞こえてきた声にぴたりと止まった。

「あああ!はっ・・あん・・あ・・生田先輩っ・・」

な、な、な!

智早と松野は同時に顔を見合わせた。

「な、なんだよ今の声!どうなってるんだよ、何もしてないって言ったじゃねーか!」
「知るかよ!俺だってわけわかんねーよ!どーなってるんだよ!ああ・・・ハジメちゃん・・」


「っ、坂遠・・・お前凄い締め付けてくる・・・」


「「し、締め付けるって・・どこが!なにを!」」
二人はもう半泣き状態である。


「俺たち付き合おうか・・・・・・・」

「んあっ・・・先輩・・・」



二人の中でなにかが切れた。
もう我慢できるはずがない。
自分たちのいるベットを囲むカーテンを開けると、隣のベットのカーテンも音を立てて
勢いよく開ける。

「透司てめえっ!」
智早は怒りに顔を歪め、松野は肌蹴た衣服をそのままに泣き出しそうな顔をしている。

「なんだ智早。」
「なんの用ですか先輩?」

「え・・・・・・あれ?」

智早は中の二人を見て違う意味で冷や汗を流した。

冷たい怒りのオーラを放つ二人はベットに乱れ一つない服装のまま
きちんと座ってこちらを睨みつけている。

「あれ・・・さっきの声は・・・・・・」

混乱する智早を他所にハジメは無表情のままに艶っぽい声を発した。

「え・・・じゃあさっきのって・・もしかして・・・・演技?」

二人は冷ややかな目で智早を見つめてくる。
「あら・・・やだな俺ちょっと勘違い・・あはは・・・」

「先輩はなにをしていたんですか?」
「え・・・俺は・・あはは俺も演技をちょっとね・・」

「孝治・・・・・」
「えっ、な、なに」
「その格好は何だ?」
「あ・・・・・・」
透司は立ち上がると松野の腕を取って隣のベットへ引き込みカーテンを閉めてしまった。



透司の奴、完璧に怒ってんな・・・・
智早は腕を引かれる松野を横目に見ながら心の中で謝った。
だがすぐに近くから感じる肌を刺しそうなくらいに冷たい冷気に体を強張らせた。
「は、ハジメちゃん?・・・あのー・・」
怯えた視線でハジメの機嫌を伺う智早にハジメはにっこりと笑いかけた。
「二ヶ月おあずけにしましょう先輩。」
語尾にハートマークが付きそうな口調で可愛い顔を微笑ませる。
「に・・二ヶ月ーーそ、そんなの無理・・」

だがハジメは頑として聞きつけてはくれない様子だ。
隣からは微かな喘ぎ声が聞こえ始めている。
智早の心はいっそう沈みこむのだった。


<fin>






あんなヘボ話のパロを書いてくださるなんて・・・(感涙)

恢さん、めちゃくちゃありがちょーですvv

智早に対するハジメちゃんがべらぼうにツボでした!!(爆)

興奮のまま、お礼メールを書いている最中に書いたヘボSSをここでも公開したいと思います。

頂いたパロのその後だったり(笑)→その後??

 

恢さんのサイト様は残念ですが閉鎖されてしまいました(涙)

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